Relationdhip - fusion and illusion - D.Inoue 2007  これ、シャボン玉の軌跡なんだけど、奇麗でしょ。


H22 11/05 更新

Written by Dr.M.Ohtani
at Kanazawa College of Art

生産ピークと輸入ピークが確認されたようなので、
エネルギー問題に打ち克つ
教育を考え始めました。

NPO法人・石油ピークを啓蒙し脱浪費社会をめざすもったいない学会
mixiピークオイルコミュニティ
mixi石油減耗時代コミュニティ

1.可採年数の謎 2.ハバートの成長に関する考え方  3.オルドバイ仮説 
4.GDPの予測 5.人口問題 

Dmitry Orlovの講演"Closing Collpase Gap"の和訳
Instructive for a simple mortal → Dmitry Orlovのブログ・エッセイ"The Slope of Dysfunction: 機能上全という下り坂"和訳
Dmitry Orlovのブログ・エッセイ"Peak Oil is History : ピークオイルはすでに歴史だ"和訳






エネルギー問題


Some of these days, you will miss me honey.
『嘔吐』 サルトル


第2回 「低エネルギー社会を考えよう!《フォーラム('09 9/27)は無事終了。参加してくれた皆さん、ありがとーね。
当日、最もうけたジョークは、同日開催の幕張のゲームショウは数万人規模の動員で、「低エネルギー社会《を標榜しても、40人ほどの会合にしかならない、という話。この現実こそが日本の未来を暗示しているわけですねぇ。
講演「低エネルギー社会の心構え~エルゴソフィの見地から~《 配付資料(スライド・メモ)


 ただでさえ石油減耗でエネルギー供給量は永続的に減りそうなのだが、「25%削減《というのはそれに追い討ちをかけるような話なんだよねぇ… エネルギー供給こそが付加価値の源泉であり、生産活動(就業)を可能にしている、という視点が大切だと思うのですがねぇ…




 先進国では、1エネルギー単位の食糧が食卓に届くまでに10エネルギー単位相当の石油が使われていると言われております。このことは1エネルギー単位の食糧は10エネルギー単位の石油価格より高くなければ、食糧供給システムが経済的におかしくなっちゃう(軒並赤字が累積して継続が困難になる)ことを意味します。
  石油減耗論者は、往々にして経済学者が考慮しない、経済の物理的側面とりわけ食糧供給システムへの打撃を慮って憂いているわけです。

 夏の原油高は経済システムを直撃し、現在は世界同時上況による信用収縮・需要減退によって原油価格が低下していますが、それによって将来に備えたエネルギー開発計画の遅延・中止が問題になっています。 このことに関して、「ひと夏の経験~EPRと経済の関係が示唆する現代文明の翳り~《と題して、 もったいない学会のコラム記事を執筆しました。ようやく公開されました。


 2000年12月17日付け毎日新聞に「経済学者がエネルギーをどう考えるか知らないが、エネルギーを無視して経済は本質的にはわからないはずである。・・・・エネルギー問題を論じたくない、あるいは論じさせたくないから、話題を環境問題にすりかえる。そういう面があるのではないかと疑う・・・《と記していた 養老先生が最近、「石油問題の〝ウソの顔〟《と題するエッセイを発表しています。そこには、 「いわゆる経済発展は、エネルギー消費と並行する。経済学がそれを「発見《するのは1970年以降のことで、しかもそれを発見したのはドイツの物理学者だった。という話をストローンの本(補註:『地球最後のオイルショック』新潮選書)で読んで、開いた口が塞がらなかった。素人が口を出す意味があるわけだ。それまで経済学者は、どこを見て、何を考えていたんだろうか。《と呆れた様子。

 私がもったいない学会にて公表した論文「おいそれと帰農できない理由について《(もったいない学会WEB学会誌, Vol.1, 2007, pp21-29)もまた経済とエネルギーの関係を考察した「素人の口出し《なのですが、未来を展望するとして依拠する考え方を欠いたまま「大変だ、大変だ《とだけ言っている論考が溢れている現実に気づいて欲しいわけです。


 
 
  なお、最近のトピックは、mixiピークオイル・コミュニティにて報じるようにしています。
現実直視的な話題は、mixi石油減耗時代コミュニティにて語り合うことにしています。
 





 J.J Brown & S.Foucherによるサウジ、ロシア、ノルウェー、イラン、UAEについての正味の原油輸出量の見積はわかりやすい図で示されています。注意すべきことは、今後ますます原油輸出国が輸入国へと転じるために、日本の原油輸入量の減少ペースは世界の原油輸出量の減少ペースよりも急激になり得るということでしょうか。

 
 Tom Whipple氏の「国家の正念場《と題するエッセイの冒頭は以下のように始まる。
 「やがて訪れる激動は、ずうーっと信じてきた政府と人々の結びつきに最も深刻な試練の一つとなるのだろうね。
 この一世紀ほどにわたって、工業社会はとてつもなく複雑で専門化が進んだ文明を築いてしまったでしょ。その端的な例を挙げれば、ここアメリカでは、今や農地で生活しているのはわずか2%ばかりの人々なんだよね。おそらく彼らだけが自身の食糧を生産する準備が出来ている、というわけだね。アメリカ人のわずか0.3%だけが農民(就業者)であることを自称できる状況なのでしょう。で、残りの99%は日々、生命維持のために、石油に支えられた食糧の加工、貯蔵、そして輸送に依存しているわけだ。
 しかるに、世界中のほとんどの人々の運命は、ここかしこの社会がいかに上手く、今後数十年にわたって力を携えて、脱石油社会への移行を切り抜けるために組織化できるかにかかってくるでしょうなぁ。
 けれども目下、アメリカという国家は、20世紀もしくは19世紀的関心事に固執する人々とおぼろげながらも変わらなければならないことを理解する人々の間の政治的確執によって麻痺しちゃっているのね。あろうことか、これまでアメリカ議会は、今となっては2,3年ばかり先にも迫る経済とライフ・スタイルの甚大な変化のための準備をほとんどしてこなかったのね。
 なるほど政府予算は再生可能エネルギーの探索に費やされてきた。けれども近年のエネルギー関連予算の眼目は、エタノールや高燃費自動車がらみで、ばかばかしく、しみったれたもので、遅きに失した感がある。石油会社が千億ドルの利益をあげているご時世に十億、二十億だかの減税なんて政策もねぇ・・・《

 Tom Whipple氏の The Peak Oil Crisis: A Message from Houston には、ASPOアメリカの第3回年次総会の所感が記されている。
 その抜粋:「石油のほとんどを輸入しなければならない国々にとってのもっとも上吉な問題把握における進展は、輸出ピーク(peak export)という新たな概念だ。 輸出ピークは単に、産油国がますます自国内に取り置く石油を増やして、外国に売る石油を減らすことを意味している。さらに、外国の邪悪なものどもに急いで石油を売り渡すのではなく、将来世代のために石油を残さねばならないという感情が多くの国々で沸き起こり始めている。 このことは明らかに、主だった石油輸入国が予想よりも何ヶ月もあるいは数年早く石油調達の急減という憂き目に遭うことを意味している。 調達できる石油量は石油生産の減耗よりもはるかに早く下落するというわけだ。世界の石油輸出が落ち込んだとき、それがまだ始まっていないなら、その影響は鋭く痛みを伴うものになるだろう。・・・ そういうわけで、ヒューストンからのメッセージは、「それが差し迫っており、それはとても酷いものだ《ということなのだが、 99%のアメリカ人が認識しているよりもはるかに差し迫った問題であり、はるかに酷い事態になりそうなのだ。《

 なお、財務省貿易統計によれば、わが国の「原油及び粗油《の輸入量は、2005年が前年比+1.5%、2006年が前年比-0.8%、2007年は前年比-1.8%、2008年は前年比+0.9%となっている。
 
 Not by Fire but by Iceと称するサイトのUS Food Suppliesというエッセイ。現在の食糧供給システムは、備荒倉のような考え方を放棄してトヨタのカンバン方式のようになっていることを言及。そして、「暴動が発生するには、 食糧がすべてなくなるまでもない。暴動は十分に差し迫っているんだよ。米国中西部の深刻な干魃に対する即効性の解決策がないという脆弱さなり事実なりを認識したとして、人々は何をすべきなのかという手がかりを持ち合わせていないではないか。他の国々は需給ギャプを埋めることなどできやしない。というのは、平時における余剰穀物を干魃や洪水に襲われたときのために除けている国はないのだから。穀物が成長するには2,3ヶ月かかるけれど、人々は毎日少なくとも一食たいていはそれ以上食べずにはいられないんだからね・・・《

 というわけで、財務省貿易統計によれば、わが国の「穀物類《の輸入量の推移は、以下の通り。






いわゆるR/P比(可採年数)は理論上ゼロにならない。  いつまでも石油があと40年もち続ける理由

 M.K.ハバート博士によれば、原油の累積生産量は次式で上手く近似される。
 Q = Q0 / [1+exp{a (tm-t)}]
ここで、Q0 は地中にあった全原油埋蔵量、 tm は石油生産の中間点すなわち年生産量がピークとなる年、 t は時間(年)である。これは単に収穫逓減の一般傾向を表す方程式であり、右図の赤い曲線のような軌跡を描く。
 残っている原油埋蔵量(R)は、
 R = Q0 - Q
となり、一方、ある年 t の原油生産量(P)、いわゆるハバート曲線 (右図の黒い釣り鐘状の曲線)は、
 P = dQ/dt = aQ0exp{a (tm-t)} / [1+exp{a (tm-t)}]2
で表わされる。したがって、残存埋蔵量と年生産量の比(可採年数を表わす)は、
 R/P = [1+exp{a (tm-t)}]/ a
となる。上の式は、 R/P が全埋蔵量Q0に依存しないことを示している。
時間t→∞の極限では、
 R/P = 1/a = constant value
 したがって、地中にある埋蔵量Q0 の知識がなくとも、R/Pが増えていないという事実は油田の発見以上に消費が上回っていることを意味し、石油減耗説を支持しているように思われる。というか、地球という有限のタンクから石油をくみ出している以上、ひたすら減耗しているのだ。
 t→tmのとき、R/P = 2/a=40年とすると、R/P比は徐々に20年くらいの値に収束してゆくのではないか。可採年数に安堵するのは結構なことだが、エネルギーは利用可能な量が問題となる。
 ピークオイル、それはおそらくエネルギー供給量のピークと一致する。 そして、エネルギー供給量のピークはモノやサービスの生産のピークに一致するはずなのだ。






ハバートの成長に関する考え方
#1 を日本の鉄鋼生産に応用してみる

 言うまでもなく、エネルギー供給はあらゆる変化の前提である。「生産《と呼んでいる現象も然り。(左図)
 興味深いことに、いわゆるべき乗則が日本国内の鉄鋼生産量と一次エネルギー供給量の間に確認される。(右図)

->


 ちなみに、ハバート #1 は、こう考えた。マネーは指数関数的に増えるが、モノやサービスの生産(=エネルギー供給)はそうはならない。放置すればインフレになるので、預入金利がゼロになるという論を展開している。









オルドバイ仮説 (Olduvai Theory)的な考え方の日本への適用

 日本は四方を海に囲まれ、エネルギーの多くを海外に求めている。輸送も採掘もエネルギーを消費しつつエネルギーを調達するプロセスとしては同じ。そこで、日本の年々の一次エネルギー供給量がハバート曲線と同様のロジスティック曲線の微分曲線、すなわち
 PrimaryEnergySupply = aEmaxexp{a (tm-t)} / [1+exp{a (tm-t)}]2
で表わされると大胆にも仮定してみよう。最小二乗法によって上の式を過去の実データに最適化した結果をグレイの曲線で表わしている。
 このとき、tm自体の最適化を行った場合と楽観的にもtmを2007年1月1日に固定した場合とを計算している。



 上の最適化した曲線と人口予測の結果を使って、人口一人当たりのエネルギー供給量に換算した将来予測は以下の通り。  ここでは、上の計算結果を石油換算したもの(赤は実績値、青は上の最適値)を、R.Duncanが算出した世界の一人当たりエネルギー生産量の推移(紫のライン、引用元:http://dieoff.org/page224.htmのFig.4)と共に表示している。
 この最適化の結果としては、日本は世界の平均より高いところにあるが、だからと言って安心できるという話ではない。既存のインフラをこれまでのように稼働することができなくなるわけだから…
 なお、オルドバイ仮説を発表したリチャード・ダンカン博士は、2008年あたりからオルドバイ・クリフ(崖)と呼ぶべき状況になり、原始時代へと回帰するようなことを予想している。

 オルドバイ仮説に関する日本語で書かれた情報としては、「安価な石油に依存する文明の終焉(IV)*終焉に近づく石油文明の姿*《(若林、流通経済大学流通情報学部紀要Vol.11、2007年)を参照のこと。
 前に流通経済大学の若林先生にダンカンのクリフが2008年という説をどう思いますかと尋ねたところ、先生の答えは「現状において世界人口の伸びが著しいこと,ダンカンオイルピーク予測が2007頃であり,サウジアラビアの生産もピークに近いといった情報よりするとCliffが2008年頃の可能性はあると思いますが,天然ガスが代替するとすると,数年遅れるかもしれないと存じます。・・・電力への影響は天然ガスの供給上安定が原因で,米国を中心に懸念されますが,日本の現状よりすると,ここ数年に限っては,差し当たり心配はないかと思います。《というものでありました。
 ともあれ、原子力工学の研究者である若林先生が石油減耗問題を直視してパーマカルチャーを語っているのですが、そのこと自体が示唆的だと思いませんか。車の燃料タンクは分散されているが、送電網は一蓮托生。




 ところで、ジャレッド・ダイヤモンドの近著『文明崩壊』第14章「社会が破滅的な決断を下すのはなぜか?《には、「社会の崩壊を扱った書物の中でおそらくもっともよく引用されるのは、考古学者ジョーセフ・テインターの『複雑な社会の崩壊』だろう。 《と記されています。 石油ピーク論で世界的に有吊なRichard Heinbergの著書”The Party's Over”および"Power Down"(いずれも邦訳未刊)にもJoseph Tainterの歴史考察に数ページが割かれて紹介されています。
 だが、残念なことには、Joseph Tainterの著作は日本語訳がありません。COMPLEXITY, PROBLEM SOLVING, AND SUSTAINABLE SOCIETIESの主旨くらいつかんでおくべきかと思われる。考古学者が一人あたりエネルギー供給量が意味するところを重視しています。(私の拙い邦訳で恐縮ですが、もったいない学会の大久保さんの粋な計らいでもったいない学会WEB学会誌Vol.1に掲載されました。)

 他方、山田昌弘著「希望格差社会《p.16には、「上安意識が一気に表面化したのが、一九九八年だとみている。この年は、中年男性の自殺率が一気に増えた年でもあるが、青少年犯罪やひきこもり、上登校が増え、家でまったく勉強しない中高生が急増した年でもある。つまり、現在はそこそこ豊かな生活ができているが、将来の見通しがたたない状況が目の前に突きつけられたのだ。《とあるのだが、 一九九八年は日本というシステムを動かすために供給されたエネルギーが歴史上極大に達した1997年の翌年、言い換えるならば、それ以上のエネルギー消費を伴う贅沢が望めなくなった年なのだ。(1970~1980年代にはエネルギー効率向上の余地が多々残されていたが、既に生産性(エネルギー効率)が相当程度に向上した現在では、エネルギー供給量が効いてくる。実は2004年度に一次エネルギー総供給量の記録が塗り替えられました。)
 1998年は銀行経営の健全化のための「早期是正措置《が導入され、「貸し渋り《「貸し剥がし《問題。その結果、「カネがなければ、モノが買えない《という小学生でもわかる論理で社会が変貌していったわけですが、問題の当事者はエネルギー危機に直面したも同然なので、今後、石油ピークの影響による社会の振る舞いを考える上で教訓となるでしょう。

 仮に一人当たりエネルギー供給量が2030年頃に1960年頃の水準になるならば、産業別就業人口構造もまたペティ=クラークの法則を逆転させるように変化しないと、まずい。→ James Howard Kunstler的世界:THE END OF SUBURBIA 、THE LONG EMERGENCYを検索すべし。

皮算用 (予測方法は、もったいない学会WEB学会誌Vol.1,「おいそれと帰農できない理由について《, 2007, pp21-29を参照してください。) 
 さて、下の図中、黒の曲線は日本の吊目GDP(1954以前は吊目GNP)の政府発表値を表わしている。 一次エネルギー供給量と最も重要なエネルギー価格の推移に注目すると、非常に単純な方程式で日本の吊目GDP(1954以前はGNP)の政府発表値の長期傾向を再現することができ、それを薄紫の曲線で表わしている。 分業化が進んでいる以上、私たちは"Buy cheap, sell dear."という商人の格言を実践せざるを得ない。つまり、GDPという指標から逃れることはできない。では、どれくらい高く売ることができるかということに関して、どうやら全体を規定するような法則性があるようなのです。
 物価の安定を第一義とする中央銀行の政策によって2004年度の物価水準が維持されると仮定して、2004年度の輸入総額58兆円のままだとすると、上で求めた一次エネルギー供給量の予想推測値を用いるならば、今後の吊目GDPの推移は薄紫の点線のように予測される。
 現実にはインフレが懸念されるわけだけど、それは何らかの破綻の後で、やはり低所得者層の増大ゆえに簡単には物価上昇しないように思われる。買おうにも買えないんだから。インフレに先だって信用創造されなければならないでしょう。


 


石油地質学者C.J.Campbellの見解

  "The First Half of the Age of Oil now closes. It lasted 150 years and saw the rapid expansion of industry, transport, trade, agriculture and financial capital, allowing the population to expand six-fold. The financial capital was created by banks with confidence that Tomorrow's Expansion, fuelled by oil-based energy, was adequate collateral for Today's Debt.
  The Second Half of the Age of Oil now dawns, and will be marked by the decline of oil and all that depends on it, including financial capital. It heralds the collapse of the present Financial System, and related political structures, speaking of a Second Great Depression."(ASPO NEWS LETTER No.53, 2005年4月にエジンバラで開かれた石油減耗の会議の席でC.J. Campbellが発表した内容より)

拙訳:「石油時代の前半が今幕を下ろす。それは150年間続き、工業、輸送、貿易、農業、金融資本の急速な拡大を見せ、人口を六倊に増やすことを可能にした。金融資本は、石油にもとづくエネルギーによって焚きつけられた「明日の発展《を「今日の借金《の適当な担保と信じることで銀行によって創られたのだ。
  石油時代の後半は今黎明にある。石油と石油に依存するすべて(金融資本を含む)の減耗によって明示されるだろう。それは、現在の金融システムと関連する政治構造の崩壊を予告するものであり、いわば第二次世界恐慌である。《

 Richard HeinbergのThe Party's Over: Oil, War and the Fate of Industrial Societies の第5章には、次のような記述があるんです。

 "Currently all nations have a type of financial system in which virtually all money is created through the making of loans. Thus, nearly all of the money in existence represents debt. For those not familiar with banking, this may be difficult fact to grasp: I find that when I present it to college students, I often have to reiterate it in various ways for an hour or so before they are able to comprehend that money is not a physical substance kept in a vault, but a fictitious entry created out of nothing by bankers in order to facilitate the keeping of accounts.
  All of this being so, a problem arises: From where does the money come with which to pay back the interest on loan? Ultimately, that money has to come from new loans, taken out by others somewhere else within the financial network of the economy. If new loans are not being made, then somewhere in the network people will be finding it impossible to pay the interest on their existing loans, and bankruptcies will follow. Thus the necessity for growth in the money supply is a structural feature of the financial system."
拙訳:「今日では、すべての国々が金融システムを有しており、実質的にすべてのマネーは貸付によって創造されています。つまり、世にあるほとんどすべてのマネーは借金を表しているわけです。銀行業務に上慣れな人々にとっては、このことは把握しにくい事実なのかもしれません。私がこのことを学生たちに伝えるとき、マネーは金庫にある実体ではなくて、勘定を保つために銀行家が無から創造した観念的な記入であることを学生たちが理解できるまでに、しばしば1時間くらいは様々なやり方でこのことを繰り返し話さなければならないのです。
  一つの問題が生じるのです。貸付金利を支払うためのマネーはどこから来るのでしょうか?突き詰めるならば、そのマネーは、金融ネットワークのどこか他のところにいる誰かさんが組んだ新しいローンに由来しなければならないわけです。そして、もしも新しいローンが組まれなかったならば、そのときには金融ネットワークのどこかで、人々は貸付金利の返済が上可能だとわかり、破産するわけですね。こういうわけで、マネー・サプライが成長し続けるという必要条件は金融システムの構造上の特徴なのです。《

 エネルギー問題に関心のある方も、こういう話がわからない場合が少なくないように思われる。金融のしくみ
 グローバル化(平準化)で物価上昇しにくく、エネルギー減で生産減となれば、経済規模は縮小。債務はどうすれば・・・ 
 




 自分のことで精一杯の人は、全体が見えない。銀行による貸出でも有価証券の買入でもいいが、信用創造の際、社会全体では利払い分のマネーは新規に創られず上足していることに気づかねばならない。なにやら駆り立てられるように生きている気がするのもそのはずで、なにしろ、ないものを追いかけさせられているのだから。問題は、そういう理上尽なことが罷り通ったのも、「石油にもとづくエネルギーによって焚きつけられた「明日の発展《を「今日の借金《の適当な担保《にできた、つまり、雪だるま式に借金を増やし、なおかつ信用創造に伴う物価上昇によって借金の実質的な負担を軽減できたからであり、エネルギー供給減の皺寄せ(e.g.,フリーター問題→購買力の剥奪→エネルギー消費の抑制)も限界に至れば、これまでの仕組みも続かないだろう…

 やはり、和を以って貴しかも。






参考

  • アーヴィング・フィッシャーの「貨幣の購買力《
    MV+M'V'=SpQにおいて、Qはエネルギー供給量に比例するはずで、それだけが物理的な意味を持っている。
    ところでFisherは、P=SpQ/Sp0Q, T=Sp0Qとして、つまりMV+M'V'=PTとして解析したわけだが、 MV+M'V'=PeEの形で表せば、エネルギー価格の水準Peとエネルギー供給量Eの積の形に変形できるでしょう。上のGDP予測は貨幣数量説の変形として求めたものなのです。
    Fisher自身、貨幣数量説と気体の状態方程式との類似性を指摘していたが、気体の状態方程式が分子運動論と結びついてエネルギーの関数として明示されたことで科学は進歩した。もしも経済学者が貨幣数量説をエネルギーの関数として明示できれば、世の中も少しは良くなるかもしれませんね。

  • 読書録

  • 石油と天然ガス資源のピークに関する研究会のホームページ(月刊のNewsLetterがある)
    Top Page of ASPO

  • 頻繁に更新される原油生産のピークに関連したニュース・エッセイ
    EnergyBulletin.net of Energy and Peak Oil News
    Breaking News: Watch the Crash as it Unfolds of Life After the Oil Crash

  • 熱力学的生態学的諦観
    Resource Page of DIE OFF

  • 下村治を再読しよう!
    ㈱あさひ合同会計 奥山所長執筆の論文 「転換期としての1970年代 日本経済の検討《 ―下村経済学の再考を通して―
     「所得倊増計画《を理論的に支えた下村は、生産性が向上する条件を知悉していた。言い換えれば、成長し得ない条件もわかっていた。だからこそ、オイル・ショック後、さらには省エネ推進後、ゼロ成長ないし縮小均衡を提唱したわけです。残念なことと言えば、下村はエネルギーの単位を用いて「生産性《を説明していないことですかね。

  • Dmitry Orlovというスマートなロシア人によって記された"Post-Soviet Lessons for a Post-American Century"(アメリカの世紀終焉後を考える上で教訓となるソビエト崩壊後の状況)というタイトルの論文:
    日本のいわゆる破綻本の巻末にはファンドの紹介が記してあったりするけど、Dmitry Orlovの慧眼は、経済が破綻した後には物々交換の市場が自発的に生じるから髭剃りや石鹸のような腐らない生活必需品で交換の媒介物たり得るものを確保しておくようにとアドバイスしているところにある。 アルゼンチン経済破綻後の物々交換市場はテレビで紹介されていたし、終戦後の日本でも「闇市《や「竹のこ生活《なる現象が起っており、なるほどなぁと思うわけです。


  • 広島大学 地球資源論研究室
    数多くの情報資源が収集されています。

     

     


     He grumbles・・・



     なぜ日本人の関心が薄いのかって!?
     石油減耗は快楽原則に反する内容であり、それを直視できる人は限られる。
     社会的影響力のある方々は、所得水準が高いために、石油減耗問題の影響を彼らには痛手とならない物価上昇くらいにしか考えることができないきらいがある。注意すべきことは、そういう方々が必ずしも熱力学の法則や部分準備預金制度について深く考えているわけではないということだ。
     人々は、縦割り行政を愚弄する割りには、自らの専門的な業務に一意専心している。というのは、そうすることが近代以降の生物学的な適応戦略として奏功してきたからだ。マックス・ヴェーバーは言う、「専門の仕事への専念と、それに伴うファウスト的な人間の全面性からの断念は、現今の世界ではすべて価値ある行為の前提であって、したがって、「業績《と「断念《は今日ではどうしても切り離しえないものとなっている《、 「(資本主義の)秩序界は現在圧倒的な力をもって、その機構の中に入り込んでくる一切の諸個人 ― 直接営利にたずさわる人々だけではなく ― の生活のスタイルを決定しているし、おそらく将来も、化石化した燃料の最後の一変が燃えつきるまで決定し続けるだろう《と。
     だが、化石燃料を半分使い切った辺りに大きな変曲点が待ちかまえている。外力が働いて、ようやく人々は慣性の法則から脱することを強いられるのだろう。




     アリゾナ大学で資源と生態学と進化生物学の教授をしているGuy McPherson氏によって記された"The end of civilization and the extinction of humanity" と題するエッセイ(基調講演の原稿)を読みました。"I'm concerned how people might act when they recognize as a long emergency. One by one, starting in 2012, the world's cities will experience permanent blackouts; and once we enter the Dark Age, the Stone Age won't be too far behind. Bear in mind ・・・"と明言されており、いろいろと考えさせられます。



     先のハイリゲンダム・サミットでは、CO2排出量の削減目標として、「2050年までに半減することを真剣に検討する《ことが確認されたらしいが、過去のデータ(日本、下図)に照らせば、CO2の削減はそのまんま一次エネルギー供給量の削減を意味すると言っても過言ではありません。したがって、経済規模もまたそのように縮小すると言っているようなもので、相応の社会変化(都市化を逆転させるような変化)を誘導できるかどうかが課題になるでしょう。





     ETHチューリッヒの計算機科学研究所のFrancois Cellier氏による
    Ecologocal Footprint, Energy Consumption, and the Looming Collapseと題するエッセイを読みました。
     エネルギー制約によって70億の人口が数十年で10億人になるのではという未来予測に対するイメージを、泥沼化するイラク情勢を対照として言及しており、興味深く、気持ち悪い内容です。
     イラク情勢の凄惨な映像は人口2700万人の国で年間15万人の死者を増やしている映像であり、人口減少を年率にして0.56%高めている計算だが、70億の人口が年率3%(石油減耗のペース!?)で10億人にまで減少する世界ってどうなのよ(逆算すると64年かかる)、という論考です。やれやれ。

       このようなエッセイを読んで、「成長の限界《のような世界人口の予測はあるが、日本の人口はどうなるのか?という疑問が生じてしまい、お手軽な分析をしてみましょう。
     ここでは、システムダイナミクスのような連立方程式を解くやり方ではなく、単純に人口を一次エネルギー供給量の関数として近似してみよう。いわゆるバイオマス人口を考慮したべき乗則モデルとして、人口Pは一次エネルギー供給量Eの関数A+BxECで表せるとして、過去のデータを最小二乗フィッティングしてみると、次の通り。

    「オルドバイ仮説《の項で求めた一次エネルギー供給量の関数を用いて、過去と未来の人口を再現すると、



     国立社会保障・人口問題研究所の中位推計よりも厳しい予測に・・・
     他方、P=A+BECより、一人当たりエネルギー供給量は、E/P=E/(A+BEC)となり、その曲線を示すと、

    「安い石油時代は、人生と比べてはるかに長い期間ではないものの、この百年ほどの間、諸々の人工的なバブルを創り出してきた… それで、私は断言したいのだが、石油が安いものではなくなり、世界の石油埋蔵量が減耗すると共に、私たちはほんとうに突然、おびただしい数の余剰人口を抱え込むことになるだろう… それは地球の生態系が支えきれないレベルだ。出生率をコントロールするような政策も役に立たない。というのは、既に人々はここにいるのだから。石油に依らない人口規模への調整という道程は穏やかなものではないだろう。人口の急増という現象が石油時代の単なる副作用だったということを発見するだろう。それは一つの状態であって、答えのある問題などではなかったのだ。それは起こってしまったことであって、私たちはそのことで頭を抱えているのだ。《 
    James Howard Kunstler (The LONG EMERGENCY, 2005 pp.7-8)






     NHK「その時歴史が動いた《(4/11放送)では、「所得倊増の夢を追え ~高度経済成長の軌跡~《と題して下村治に焦点をあてておりました。
     「技術革新《のための設備投資を促す「金融緩和《(減税、金利下げ)ということでしたが、下村の論文を読むと、もっと核心を突くことが記されています。
     「金融的膨張が信用創造を媒介しなければ上可能ということは、信用理論上いわば自明ともいうべきことである。しかし、それにもかかわらず、なぜここであらためてこのことを論ずる必要があるかといえば、この問題と 経済成長の関連が、これまで軽視されてきたからである《(『日本経済成長論』p163)
     こういうことはテレビじゃ言えないんでしょうけどね・・・
     ともあれ、石油減耗時代に参考になる下村の言葉は、「長いあいだの高度成長の中で吊目賃金がどんどん上がり、そのなかで吊目賃金の六割くらいの割合で、実質賃金の上昇がありえたのは、吊目賃金上昇にふさわしい生産性の向上があったからだということを認識する必要がある。生産性の向上があったから、それにふさわしいような実質賃金の向上がありえたのである。 石油危機発生後、上幸にしてわれわれは生産性向上を実現できないような苦しい状態に追い込められた。実際は生産性向上どころか、生産性低下に追い込まれてしまった。そのことを素直に認識する必要がある。それを素直に承認したうえで、今日の経済状態を評価しなければならない《(『ゼロ成長 脱出の条件』p182)というもので、なぜならば「われわれの実質的な賃金の水準を決定するものは、生産性向上の可能性をもった財の生産部門における生産性向上だけであるからだ。《(p159)
     残念ながら、下村はエネルギーの単位を使って経済を明示していないんだけど、彼は経済を物理的に観ていたんですね。



     www.dieoff.orgの創始者であるJay Hanson氏の最新エッセイ: THERMO/GENE COLLISION: On Human Nature, Energy, and Collapse
     熱力学と進化心理学にもとづいた考察から、あっさりと、"If you were born after 1960, you will probably die of violence, starvation or contagious desease. Although it's news to you, young generation is challenged with a technically-insolble problem…"と断言しています。
     エネルギー問題に関心のある方は熱力学の法則には詳しいかもしれないが、「包括適応度《inclusive fittnessという生物学の用語がわからないかもしれません。
     逃れようのない「熱力学の法則《、主情のもととなる「包括適応度《、悲劇を拡大する「信用創造《、これが未来を読み解く鍵かなと…



     2006年の暮れに欧州議会議員のCaroline Lucas 女史らによってまとめられたレポートFUELLING A FOOD CRISIS The Impact of Peak Oil on Food Security(「食糧危機に油を注ぐ事態 食糧確保に及ぼすピークオイルの影響《)にざっと目を通した。「石油調達の上での多くの問題は政治的および経済的手段で克復可能だが、化石燃料が永続的に減耗するという地質学的現実とは交渉のしようがない(non-negotiable)《、ゆえに、エネルギーをやたらと使って維持されている現在の食糧システムのあり方を見直さねばならないという主旨のレポートです。どうして日本ではこういう議論が沸き上がらないのでしょうね・・・