| 皆さんは「道具」という言葉に、何を連想されますか。私たちの身の回りにある道具に目を向けてみましょう。机上の文房具や工作用具など、生活のさまざまな状況で必要な物理的な意味での道具が思い浮かぶでしょう。しかし、私たちにとって大事な道具は、それだけではありません。もう一つ、心の拠りどころとしての、精神的に必要な道具があります。
自分の部屋を思い浮かべてください。家族の誰かが生けた一輪の花があり、壁には一枚の絵画が飾られていたり、しゃれた形のステレオから音楽が流れていたりするかも知れません。実は、その花や絵画や音楽やステレオのしゃれた形こそが、心の拠りどころとして、精神的な意味での大切な道具なのです。
本学は創立以来60年間、美術、工芸、デザイン、芸術学の各分野のスペシャリストを世界に送り出してきました。人々の生活をより豊かにする美術家やデザイナーや美術理論家達です。言い換えれば、心の拠りどころとしての道具作りの専門家達です。
今、アートは新しいメディアの出現により、その情報は限りなく多様化して、激しく変化して見えます。常に冷静に情報を分析して事に当たらねばなりません。当地金沢は、明らかな四季の移ろいの基に、豊かな自然環境に恵まれた風土に囲まれています。そのうえ、伝統工芸や建築など歴史的遺産も豊富です。このように落ち着いた潤い豊かな街で、思索し、創作活動ができることは大変幸せなことです。
本学の教育の基本理念は、「実技と理念の一致」を厳しく教授することです。独創的な発想の基に、素材を熟知して、鍛錬された適切な技術を駆使することを目標にするのです。「手で考えて心で作る」をキーワードに論理的なもの作りを実践することです。
創作とは、真似の許されない世界です。時代に即した表現は時代遅れと認識すべきです。誰も表現しなかった「もの」や「こと」を創り出してみませんか。金沢美大から皆さんの手で新しい時代を、発信しようではありませんか。
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金沢美術工芸大学
学長 久世 建二
President KUZE Kenji |
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