私が初めて携帯電話を持ったのはもう5年くらい前だったが、最初のうちはほとんど携帯せず、ここ一年もメール機としてたまに使う程度だった。そもそも私は携帯電話が嫌いだ。なぜなら携帯電話は、(1)ハイパーリアルなコミュニケーションを可能にする、現代のシミュレーショニズムを象徴する悪の使い魔である。(2)諸々の携帯電話サービスの横行や、他メディアとの連動とは、結局は文化の育成ではなく、電話会社を儲けさせることにしか役立っていない。(3)ガキ共をこんな実のない遊びに麻薬的に熱中させ、あげく高い電話料金を請求し、執拗に支払いを命ずる。未成年者には親の承諾が必要なはずだが、このチェックは非常にルーズである。まるでサラ金か暴力団である。まあ、今やサラ金と銀行とが区別を無くしている時代なのだから、しょうがないわけであるが。
また、今や電子メールは、コンピュータで行うものではなく、携帯電話で行うものになってしまっている。うちの大学では、かつて、capsという学生ボランティアを組織して、学生のサーバ利用の利便を図ってきたが、capsたちで作りあげてきたノウハウも、いまや携帯電話メールの前に、全く意味をなさなくなってしまっている。また、広く世間に目を向ければ、ともかく若者は音楽も聞かず、映画も見ず、あまつさえ漫画も読まず、携帯電話ばかりいじっている。しかも、メールでもしてるのかとおもいきや、ゲームやったりしている。こんな文化環境で、若者が育つはずない!などとオヤジは思うのである。
さて、以上、そんなこんなで、私自身、今年(2005年)6月まで、白黒液晶の折り畳めない携帯電話を使っていたのだが、ポイントがやたらたまってきていて、その期限もあるらしいので、思い切って機種変更をしてみた。
0円携帯というのは、機種変更では出来ないようである。で、ポイントで買える範囲内なら何でもよかったのだが、さすがにデザインが悪すぎるのは嫌だなと思った。他、重たいものもいやだ。テレビは不要だし、デジカメも基本的には、デジタルカメラの良いのを持っているから、必要ない。で、まあ、たまたま選んだのが、東芝のV601Tという機種だった。ちと古いのだろうと思う。G3とかいうタイプのやつは重いし、すこし高い。
青空文庫という、素晴らしいサイト&プロジェクトがある。著作権の切れた文献を、仲間を集ってテキスト入力し、無償で公開するというプロジェクトである。近代文学が多いので私は直接使うことはあまりないが、大変素晴らしい。以前、そこで見掛けたキャッチコピーが、「ケータイで小説を読む時代」であった。この時ばかりは思った。「おいおい、テキスト入力をするのは、読むためかい?」。読むのに適しているのはやはり冊子体の書籍・活字である。電子データは検索してこそ意味がある。とは言え、モバイル性にも有効性は有る。文庫本なら旅行カバンに入れられるが、『國書總目録』をカバンにいれるわけには行かない。で、実際は、そうしたデータは、パソコンに入れていくわけだが。
しかし、実際にそれらを使うのは調査現場(当然パソコンは持っていく)のみならず、古本屋の店先などで「あったら便利だな」と思う場面が多い。店先でパソコンを広げてもいいのだが、時間も掛るし面倒。だいいちかっこ悪い。それに、ノートパソコンなど、常に携帯しているわけでもない。他方、ザウルスなどのような小さなパソコンも世の中にはあるが、電子辞書さえも使わない私にはあまり食指が動かない。
機種変更したV601Tは、SDカードを入れられるようになっている。これで、パソコンデータを携帯電話に入れることが出来るはずである。で、512MBのSDカードを買った。で、実際やってみると、携帯電話に附属しているツール類では、まるでそれらの操作が出来ないのである。テキストファイルも1Kbyteを超えた程度か、そのくらいでもう読み込めなくなる。これでは使い物にならない。「おいおい、ケータイで小説読めないよ〜」って。
ネットで検索すると、ありました。ここからが本題です。takuさんという方が、Vアプリで、テキストファイルや画像・音楽ファイルなどの表示・再生などを行うユーティリティを作って、公開しているのである。シェアウェアだが200円ちょっとだから、只みたいなものである。vodafoneからの請求に自動で課金されるので、支払いの面倒もない。まあ、3000円でも買いますな、これなら。
サイトはこちら。http://www.tree-explorer.com/
Vアプリというのは、あまりよく分からないが、Vodafone用のjavaプログラムなのだろう。聞くところに拠れば、ゲームが大流行のようである。そんなさー、携帯でゲームやるより、人生のゲームを楽しめよ。携帯電話に必要なのは、ゲームではなく、Tree!Explorer(以下、T!E)のようなユーティリティ・ソフトである!
使う状況は、ノートパソコンを持たず、国文系のデータが必要な時である。調査旅行などではなく、ちょっとした研究会、古本屋めぐりなどの時である。
ともかく、それを見越して、512MBのSDカードを買ったのだから、データは詰込めるだけ詰込む。
データは主に、その形式面で2種類ある。いずれもテキストファイルであり、ワードやエクセルといった特定のアプリケーションソフトを要求するものではないから、携帯環境でも使えるのである。
具体的には、和歌データ(二十一代集など)、古典文学大系データ、JALLC等のフリーデータ、謡曲三百五十番集データ、漢籍本文データ、自分の論文など。
具体的には、『國書總目録』データ、藩版の全リスト、漢学者名号の一覧、和刻本漢籍の一覧、楳図関係のデータ、など。
さて、T!Eでテキストファイルを閲覧するには、本文データは自動で行折りしていたほうが見やすいし、DBデータは一行1000字とかで表示したほうが見やすい。
そもそも、携帯電話のCPU自体が馬力がないため、かなりプログラムにも苦労されておられるそうで、ファイルの読込みなどには、それなりに時間がかかる。100Kbを超えるデータの読込みは、やはり時間がかかる。データ類の中には、例えば『國書總目録』データなど、「あ.txt」などは1メガくらいあったので、これを90Kbごとくらいに分割した。かつファイルの始まりの訓みがそのままファイルのベースネームになるよう、自動的に分割するためのPerlスクリプトを書いて、分割しました。また、1フォルダ中のファイル数があまりに多いと、ファイル一覧を表示するだけでも時間がかかってしまうので、適当なところでフォルダも分割しておく。
また、検索機能も実装されている。これで正規表現での複数ファイルにまたがる検索ができたりしたら、もうパソコンは要らなくなってしまいます。(さすがにCPUのパワーの問題も含め、難しいそうです)。
ともあれ、以下のような感じであります。
ともかく、これだけデータが揃っていれば、非常に便利である。
過日、古本屋を出歩くタイミングがあった。私の専門は和本と漫画である。
かつては、古本用の手帳を作っていた。が、電子データと互換性を持たせるのが面倒になり、やめてしまった。
漫画については、楳図かずお関係の購入リストの電子データを一枚の紙に極小フォントでプリントアウトし、財布に入れて常に持ち歩いていた。これはこれで今でも便利だが。和本類は、持っているかどうか未だ記憶に頼っていた。しかし、図書館で見た本などと段々混乱してくる。架蔵本の電子データは(藩版に関してのみ)完備しているが、一枚の紙にプリントアウトしきれる程度の量ではすまないので、困っていた。
さてT!Eの出番である。今回、古書会館や日本書房でも、携帯を出して見てたりして、「何者じゃ?若者か!」みたいな感じで、なんか恥ずかしかったが、便利ですよ。ただ、その場で、的確な情報をすばやく引き出すためには、予めデータ自体の整備点検が必要になってくる。もともと、パソコン上で使って居たときにはいつでも適宜grep やsortが掛けられるので、データ自体を整序しておく必要はなかった。が、携帯用のデータは、例えば藩版なら、書名からでも、藩名からでも探せるように、それぞれにソート済みのデータを用意してあったほうが良い。しかし、これもT!Eに検索機能が付いたのでさほど心配は無くなった。
パソコンのデータと携帯のデータとを連動させておくのはそれなりに面倒だが、これはいずれバッチファイルなどを作れば能いだろう。
T!Eを公開してくださった、takuさんに感謝申し上げます。また、takuさんのサイトでは、掲示板にていつもご意見要望を受け付けておられます。私も、少々要望と感謝を記させていただきました。スタイタスバーにファイル名が表示されるという仕様は、私の要望なのであります。こうしたすばらしいソフトウェアに参加させていただいて、たいへん嬉しく光栄であります。重ねて感謝もうしあげます。
ファイル一覧。國書データ
「あ.txt」を開いたところ
オプションから改行数の指定
自動折返しモード
1000文字で折返し
こちらは謠曲データ
1000文字折返しモード
自動折返しモード
検索すれば
このとおり