近代の陶磁(北出コレクション)

資料名

色絵光風霽月飾壷(いろえこうふうせいげつかざりつぼ)

作品解説

安定感のある形だが、連続した更紗文と四方に開けられた窓それぞれに配された「光・風・霽・月」の文字によって快さも備わっている。「光風霽月」とは、もとは春の光の中を吹くさわやかな風と、雨が上がった後の晴れわたった空の月をあらわし、転じてわだかまりのないさっぱりとした心境を例えていう言葉である。本作は昭和35年頃の作品と考えられるが、制作当時、塔次郎はヨーロッパへの留学を果たしており、当時の心境がこの言葉にあらわれているとも考えられる。

作者情報

北出塔次郎【1898〜1968年(明治31〜昭和43)】
1898年(明治31)生まれ。兵庫県有馬郡三輪村で坂本籐吉の子として生まれ、名を籐次郎、のちに塔次郎と改める。1914年(大正3)大阪三越で富本憲吉、津田清楓の展覧会を見て、陶芸家になることを決意。1924年(大正13)石川県江沼郡勅使村栄谷の九谷焼窯元、北出家に婿入りし陶工として第一歩を踏み出す。絵画を矢野橋村、陶芸を板谷波山に師事。1936年(昭和11)色絵研究のために九谷を訪れた陶芸界の重鎮富本憲吉に色絵技術を教える一方で彼に師事し多大な影響を受ける。塔次郎は、九谷本来の良さを生かしつつ現代的な感覚で独自の作風を築き、九谷の近代化に功績を残した。1968年(昭和43)没。

 

作者名

北出 塔次郎(きたで とうじろう)

制作年

1960年(昭和35)頃

法量
口径8.8胴径24.0底径14.5高20.4