瓢形の鉢の見込みにある葉模様は、実物を当てて上から押さえて型取りしたものである。この技法は仁阿弥晩年の作品である「糸瓜絵平鉢」や「銹絵金彩一葉鉢」にも見られる。器全体を白化粧した上に、葉の部分を銹絵具と呉須で色をぼかしながら塗り分け、型押しした葉脈を際立たせている。仁阿弥は彫塑的作品を得意としており、本作の器形や茎部分などにもその素養を見ることができよう。底部は露胎で「仁阿弥」の印が捺され、三箇所に足がついている。
1783年（天明３）伊勢亀山の藩士の家系に生まれる。父、初代高橋道八は京へ出て粟田口に開窯しており、仁阿弥は22歳で家業を継ぐ。京焼きで始めて磁器を焼いた奥田頴川（1753〜1811）門下となり、南蛮写しや朝鮮写しなどを制作しつつも、京焼きの伝統を受け継ぎ純日本風なものを目指した。1826年（文政９）仁和寺宮より法橋（僧位の一つ）の任官を受け「仁」の字を、醍醐三宝院の宮より阿弥号を賜り、仁阿弥と称した。以後仁阿弥の名で知られるようになり、作品や箱書にこの号を使用することが多くなる。京焼きの名手として名を馳せ、諸藩大名の招きを受けて各地で御庭窯（諸藩の藩主や老中らが自らの邸内に築かせた窯）の開窯に当たっており、京焼きを近隣諸国に広める一端を担っている。1855年（安政2）同地で没。
作者名
仁阿弥 道八（にんなみ どうはち）
制作年
法量