国際的芸術家滞在制作事業(アーティストインレジデンス)アルベルトがルッティ
国際的芸術家滞在制作事業実行委員会(金沢美術工芸大学、金沢21世紀美術館建設事務局)
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 私は今回のレジデンスで学生のリーダーとして参加しました。昨年の12月から今年の4月までという長いスパンでのプロジェクトでやはりそれなりに山あり谷ありの道程だったのは言うまでもありません。なかでも最も大変だったのは学生の思うレジデンスと実際のレジデンスとで大きくギャップが生じ、学生の足が重くなってしまったことです。しかし学生だけのミーティングをおこなって話し合い、(「学生によるミーティング」参照)ベストな状態で再び歩み出すことができました。そんな出来事もプロジェクトが成功に終わった時にはいい思い出になっていました。みなさんお疲れさまでした。そしてありがとうございました。 
環境デザイン修士課程2年


 私たちがガルッティ氏の言う“出会い”を感じ始めたのはいつからだったのでしょう。私たちは時として、具現化する形態に作品価値を求めてしまうことが大いにあります。今回のレジデンスは具現化するプロセスやそこでの様々な個人のスタンス、またはそれによって現れる新しい関係性そのものこそ作品の大きな一部であると考えています。私たち学生の実際の作業は新しい手法や制作方法の発見ではなく、ライトやセンサーの設置など実務作業に関することのお店の方々との情報交換であったのですが、それ以外の雑談や意見交換など、実際,作品として見ることができないプロセスの中に、作品をきっかけにした様々な可能性を感じたり、ガルッティ氏が今回の作品に含んだ“出会い”という言葉はモノとしての作品ではない、作品の成立過程のなかから生まれてくる時間のことだったのかなと思いました。
彫刻専攻4年


 今回のアーティスト・イン・レジデンスで私たち学生は作品設置のために様々な人と出会い、また協力をお願いしていった。その過程では私たちも含め多方面から疑問や反対意見も出たがそれら一つ一つを話し合ってきた。私にとってこのプロジェクトへの参加はそうした様々な関係の中に作品が生まれてくる「場」を目の当たりにし、しっかりと実感できる貴重な体験だったといえる。
油画専攻4年


 ガルッティは現代美術の最前線で活動しているアーティストとして制作に対する態度などには一貫したものがあり、自分の美術観で語る彼の話には圧倒されるものがあった。彼は学生であるわれわれに作品制作を委ねて一時帰国したが、それは結果としてこのプロジェクトにとって重要な“人との交流”を促すものになった。彼は作品完成後の講演の時「私は金沢に種をまいた。」と語った。そう、彼の作品は完成して終了ではなく、まだ始まったばかりなのだ。彼の作品はこれからの金沢の美術動向に対する布石となりうるのか?それは彼が投げかけた美術史に対する挑戦、金沢美大のレジデンス事業に対する問題、彼が町に投げかけた問題などを我々がこれからどう受けとめるかにかかっていると思う。
芸術学専攻3年


 ガルッティは、想像していたとおりの、おおらかで陽気な方だった。私は常に新しいアートを目指し、模索している彼の作品が好きである。今回もガルッティが次々と出してくるアイディアを具体化するために、学生は自分なりに考え、率先して実行していった。私たちは広坂の家々や店舗を回り、作品の取り付けの交渉や、彼のコンセプトをわかり易く説明した。大学と都市、学生と市民をつなぐ今回のレジデンスは様々な出会いがあり、それら多くの人々と触れ有意義な時間を過ごせた。この経験が次回のレジデンスにつながる良いものになればいいと思う。
彫刻修士2年


 センサーは建物の内部に、ライトは金沢21世紀美術館の敷地に面した建物の裏の壁に取り付ける、ということで説明できたのだが、あるお店ではセンサーは店の表を通る人々を感知するものと理解していることがわかった。慌てて説明しなおすと、店内にセンサーをつけることを不思議がりながらもお店の方は快く協力してくれた。説明不足ということもあったのだろうが、ありそうな誤解だと妙に納得してしまった。普通センサーは家の外にあって、中にいる人が外の様子を知るために使われるものだが、今回はまったく逆で、中の様子を外からうかがい知るものだ。ガルッティの作品は内から外にばかり向けられているアンテナを外から内向きに変えた。壁面に取り付けられたライトを見ることで、美術館という公共の場から不特定多数の人々が室内の個の空間に意識を向けることになる。見知らぬ人が見知らぬ人に思いを馳せるという心温まる一面もありながら、個人の生活というプライバシーの問題を抱える作品だ。ガルッティも、協力を決心してくれた広坂の人々も思い切ったことをしたものだと思う。
芸術学専攻3年