令和8年度 油画専攻 入試合格作品
採点・評価基準
実技試験
提示されたモチーフの観察に基づいて、形態・立体感を表現する力。
作品提出
提示された課題に基づいて、色彩・実在感を表現する力。
面 接
提出する作品について分かりやすく伝える力。
実技試験
木炭デッサン または 鉛筆デッサン
試験時間/7時間
【問題】
石膏像モリエール胸像をデッサンしなさい。背景の有無は自由とするが 試験用紙は縦位置で使用すること。
<用紙> 木炭紙 MBM(特厚口)、TMKポスター(木炭紙と同じ大きさ)
背景を排し、モリエール像を正面から捉えた本作は、安易な明暗のコントラストに頼ることなく、木炭紙の目を活かした繊細な階調の積層によって形態を構築している。
一般に、強い明暗対比は視覚的なインパクトを与える反面、中間調の豊かさを損なう恐れもある。しかし本作は、隣接する面同士を緻密なバルール(明度相関)で接続し、持続的な観察による緻密な描写を積み重ねている。その結果、過度な演出を排しながらも、石膏の構造的な力強さと静謐な実在感を高い次元で両立させている。
背景に配した低明度トーンと石膏像のハイライトを鮮明に対比させることで、モチーフの物質的な存在感を強調した構成である。背景とのバルールを緻密に制御することにより、画面内に明快な奥行きと空間性を構築することに成功している。また、木炭による豊かな階調表現に鉛筆を併用することで、稜線(フォームライン)の解像度を極限まで高めており、構造的な裏付けを伴う強固な量感(ボリューム)を創出している。
本作品は、鉛筆の線を幾重にも重ねる「ハッチング」の積層により、密度の高いトーンを構築している。一線一線を丹念に積み上げ、面(プレーン)の連続によって形態を彫り出すプロセスは、木炭以上に粘り強い習熟を要する。鉛筆特有の反射により明部の存在感が弱まりやすい難点があるが、本作はバルールを緻密に制御することで、石膏の白さと強固な量感(ボリューム)を鮮やかに両立させている。
モリエール像の正面性を生かし、背景のない空間の中でその構造的特質を浮き彫りにした作品である。安直な明暗法(キアロスクーロ)に頼らず、木炭紙の質感を活かした繊細な階調変化によって、形態を丁寧に紡ぎ出している。特筆すべきは階調の連続性であり、面と面を論理的に接続することで、作為的な強調を排した自然な立体感を得ている。静かな観察の集積が、石膏像の確かな実在感と品格ある空気感を画面に見事に定着させている。
作品提出
リズミカルなタッチによるマチエールが魅力的な作品です。一筆一筆、対象の量感を確かめるように置かれた絵の具はそのまま対象として実体化しており、散漫な浮遊感がありません。
画面全体に多様な色彩を織り込むように重ねることで、光の複雑さを表現しています。主役の編み物に目が行く色彩配置と画面構成も巧みです。
独創的な設定が目を惹くと同時に単調になりがちな座りポーズに変化を与えています。さらに顔の部分をスポット的に照らすことでドラマ性と大きな明暗表現を獲得しています。
また、様々な色彩を流動的なタッチで重ねながらも適切に対象を描写する力を備えています。
随所にユニークな工夫が見られる魅力的な一枚です。
対象と誠実に向き合う姿勢が画面から伝わってきます。冷静な観察に基づく確かな描写力によって、アトリエの張り詰めた空気感までも表現しています。
おとなしい色使いですが、肌や白いシャツの陰影の表現に作者の色感の豊かさを感じます。細密でありながら決して表面的にならずに、人物や背景の構造と奥行きを陰影の強弱で適切に表現しています。
時間をかけて画中のあらゆる対象を観察し尽くす意志が画面から伝わってきます。細部の描写が巧みなだけでなく、まず人物の堂々とした実在感が表現されている点が優れています。
手に持つ柔らかいパンと金属やビニールとの質感の描き分けが見事です。暗めの服装と明るい背景との対比が画面構成として効果的で、間に挟んだ黄色も効いています。
