令和7年度 ホリスティックデザイン専攻 入試合格作品
採点・評価基準
実技試験(デッサン)
提示されたモチーフと条件に基づいて、造形要素(形、質感、立体感、構成力等)を表現する力。
実技試験(色彩構成)
提示されたテーマに対して理解し、独創的な発想をする力。構成力と色彩感覚を表現する力。
実技試験(立体構成)
提示された問題内容を読み解く力。独創的な発想をする力。考えを立体造形として表現する力。
実技試験
デッサン
試験時間/4時間
【問題】
自身の手、与えられた手袋とハンドタオルを自由に構成して、奥行きを感じさせる描写をしなさい。
<用紙> サンフラワーペーパー(M画) 四つ切り

素手を中心として手袋をはめた手とタオルがバランスよく配置されています。タオルの陰が手の甲に落ちている様子や指の重なりが描き込まれ、狭いながらも奥行きがよく表現されています。手袋をはめた手は光の反射で描写が難しい部分ですが、表面の皺もよく表現できています。

動きを感じさせる仕上がりです。絞られたタオルと右腕が奥行きのある様子をよく表しています。手前の手は指の複雑な形に加えて、手首の筋や皮膚もよく描き込まれています。少し硬い素材の手袋は直線的な形の連続で、柔らかなタオルは曲線で描かれ、両者を近くに置くことで対比が強調されました。

上から左手、右手、タオルがバランスよく並べられ、一連の流れのある作品となっています。奥行き感は構図全体として小さいものの、素手、半透明の手袋と中の手、柔らかいタオルの異なる素材がしっかりと表現できています。

両手およびタオルの配置が素直な構図である。実際には手の大きさの範囲の奥行きしかないスケールながら、その中でしっかり描き込まれた左手と、反射が多く明るく見える手袋の対比が奥行き感を作り出しています。手袋の硬めの素材が作る人工的なエッジと透明な質感もよく表現できています。
実技試験
色彩構成
試験時間/3.5時間
【問題】
「自然」と「都市」から発想を広げ、色彩構成をしなさい。画面内に、正三角形 を効果的に配置すること。 (正三角形は、単数でも複数でも可。作品のタイトルと意図を説明用紙に 100 文字以内で記入しなさい。)
<用紙> KMKケントボード(白、A3)

この作品は、何か危険な冒険が始まりそうな印象で、課題に応えることに留まらず、自分なりのストーリーを生み出すことを楽しめています。
技法ありきではなく、ストーリーに最適な表現として全体のかすれた技法が選ばれ、画面の統一感と時間の経過をうまく補完できています。

画面の大部分を占める薄いブルーには繊細なテクスチャーが施されており、工芸作品のようなこだわりが感じられます。他の作品にはない極端な構図が目を引き、自身の美意識を信じて描き切った点を高く評価します。「自然」と「都市」というテーマに対しても、抽象的ながらしっかりとした印象を与え、説得力のある一枚に仕上がっています。

深いネイビーを背景に、ヴィヴィッドなピンクを配することで生まれるシャープなコントラスト。スマートな対比で、洗練された都会的なイメージを表現しました。一方、透明感のあるペールブルーやペールオレンジは、自然の持つソフトな温もりを象徴。正三角形の内側から、水滴が跳ねるように飛び出す描写が、生命力溢れる躍動感を画面にもたらしています。

この作品は、奇を衒わない素直な発想で主役を明確にし、描き込みの粗密や濃淡の差、暖色と寒色の分量のコントラストなど丁寧な配慮が全体の色彩の美しさにを引き立てています。自然を水彩画のように有機的に表し、都市を無機的な三角形のベタ面で描き分けている点も、表現の豊かさに繋がって見えます。
実技試験
立体構成
試験時間/3.5時間
【問題】
テーマ:「纏う(まとう)」 与えられた材料「アルミホイル」と「紙ストロー」、「ケント紙」を用いて「纏う」を テーマに立体を構成しなさい。(作品のタイトルと意図を説明用紙に100文字以内で記入しなさい。)
<材料> KMKケント #200 四つ切り、台紙用段ボール(A3、5㎜厚) 等

反射するアルミホイルの特性を活かし、風景の変化を纏う空間を表現した本作品は、感性と観察力をもってテーマに応じた表現がなされています。内部に配された紙ストローの構造が全体を支え、ケント紙との対比が造形の魅力を高めています。開放感とスケール感のバランスも秀逸です。

風が木々を抜ける情景を立体で表現した本作品は、涼やかな風を纏う感覚を繊細に捉えています。アルミホイルの反射と紙ストローの構造が風の流れとリズムを生み、風通しの良い空間が視覚的な涼しさを感じさせる、素材感と構成力が光る作品です。

大小の穴を通して差し込む光が幻想的な空間を生み出した本作品は、水のベールを纏う感覚を視覚的に体現しています。揺らぐ光と陰影が肌に映る体験や、素材同士の丁寧な構成により、静かな没入感と透明感を備えた魅力的な作品です。

装飾的なレースをモチーフに、軽やかで華やかな空間を生み出した本作品は、曲面の反復による柔らかなフォルムと素材のきらめきが魅力です。扇状に広がる構成が場に軽快なリズムをもたらし、丁寧な造形がモチーフの特性を巧みに空間へと展開しています。